【必読】DIYの為の排水管工事の基礎知識

戸建て住宅の排水管に使われるVU管の接続や取り回しは壁や床下に納まっていて通常見えません。

どのように考えて配管し、どんな接続をするのかずーっと知りたかった僕は職業訓練校の住宅リフォーム科で学びました。

基本的な知識と模擬家屋での配管設計、接続を学んだのでとても勉強になりました。

前回のVP管に続き、今回はVUを使った排水管の配管や接続についての記事です。

この記事を読めば適切な部材の選定、接続の仕方、気をつけるべきポイントなどが分かります。

ヒデ

給水より難しいかも

目次

VU管について

VU管の特徴

VU管のVUはVinylUsuniku(ビニル薄肉)の頭文字で、見た目そっくりなVP管などと比べて厚みが薄くできています。そのため水圧のかかる管路には使用できません。

主に住宅の隠ぺい部分の排水や敷地内から公共下水、浄化槽などへの埋設配管、雨どいからの排水などにつかわれます。雨どいなどで屋外使用すると紫外線によって数年で色が退色し白くなりますが使用に問題はないようです。

雨どい使用で紫外線劣化した例

VP管を使った給水の接続と大きく違うのはTS継手を使わない事と、エルボやチーズが90度になっていない点です。

TS継手を使わない(DV-VU継手を使う)

VUを接続する場合に使うのがDV-VU継手です。DVはDrain Vent(排水)VUはVinylUsunikuからきています。省略してVU継手とも呼ばれます。またVP管用の厚肉のものは単にDV継手と呼ばれます。

VU継手で配管する場合は管を差し込むとストッパーのある一番奥までスムーズに差さります。給水に使うTS継手のように力加減や面取り具合、接着剤の量で差し込み長さが変わらず一定なので(継手の種類により差し込み深さは違う)配管の長さを計算で出しやすく、仮組みなどもしやすいメリットがあります。

DV-VU継手にはVUの刻印あり
DV継手の刻印は呼び径のみ

上の写真のようにDV-VU継手にはVUの刻印があり、DV継手には呼び径の刻印しかないのが一般的だと思います。左写真のシール部分の「VU45°DL50」はDV-VU継手の45度エルボ(正確には45L)呼び径50を意味しています。右写真シール部分の「DV-DL 50」はDV継手の90度エルボ(DL)呼び径50の意味になります。

よく使われる継手の略号を載せておきます。

形状略号
90°エルボDL
90°大曲がりエルボLL
45°エルボ45L
90°YDT
90°大曲がりYLT
45°YY
ソケットDS
インクリーザIN
よく使われる継手の略号

ソケットは同径の管の接続、インクリーザは異径の管の接続に使うものでレジューサーとも呼ばれます。

呼び径が同じ場合外形も同じなのでVP管にVU継手、VU管にDV継手を使うこともできますが、内部に段差ができるので通気以外の目的では使用しなようにしましょう。

接手の違い

DV継手はVP管用 厚管

DV-VU継手はVU管用 薄管

エルボやチーズが90度になっていない

給水管に使うTS継手と大きく違うのがDV-VU継手のエルボが約91度になっていることです。

91°10’(91度10分)などと表記されています。正確には91.17°で設計されており(±0.5°)、これは垂直な配管に横方向から接続される場合に1.17度の勾配をとるためです。この1.17度はよく排水管の勾配で使われる2%勾配のことで、2/100勾配や1/50勾配のことです。

高低差のある配管を横から見た図

2/100勾配は何メートル進んで何センチ下がる(上がる)と分かりやすいです。例:5メートの距離ならその2%で10センチ下がる(もしくは上がる)とすぐに分かります。

縦方向はそれでいいんですが横方向(床に転がして配管するとき)は少し面倒です。床下を通るメインの排水管(主管)と設備(トイレやキッチン)の排水口をつなぐ時に先ほどの1.17度を考慮しなければならないからです。

メインの排水管(主管)からエルボやチーズで枝分かれした管は1メートルで2センチ、2メートなら4センチずれるのです。墨付けの時にこの2%を考慮しなければなりません。具体的には養生テープなどを貼って墨付けしやすくした後に各分岐点を一旦90度で墨付けし、その後主管の分岐点の墨を枝分かれ管の距離に応じて下流側にオフセットさせます。

床下のころがし配管を真上から見た図

枝分かれする管の距離が長い程オフセットする距離は増えます。給水のVPは肉厚ですが呼び13などの細いものはよく曲がり(しなり)ますので多少強引に接続することもできます。しかしVU管は径が太いので肉薄ですがほぼ曲がりません。しっかりと墨付けするのが無難です。

呼び径

VU管などの排水管について考える時に必要な「呼び径」について少し説明します。

管類の場合、呼び径とは内径の近似値に対する名称です。JIS規格ではミリ表記のA呼称とインチ表記のB呼称の二つが定義されています。

排水管を考える場合多くのプロや、現場で働く方がそうであるようにミリ表記のA呼称を使うのが通常です。

VU管などの規格一覧を見てみると呼び径が内径と一致する径もあれば10ミリ以上違う径も存在します。呼び径はあくまで呼び径であり外径とも内径とも違うものです。

管類の呼び径が外径ではなく内径の近似値であるのは物体の通過する空間が重要であるためだと考えられます。また、VP管とVU管で外径を揃えているのは同じ継手を使えるようにしているのだと思います。とはいえ、液体を流す場合は外径が同じだからと何でも使えるわけではありません。

VU継手とDV継手の内部

上の写真の左がVU、右がDV継手です。差し込んだ管を止めるためのストッパーの厚みが違います。段差ができないようにそれぞれ管の厚みに合わせてあります。

段差があると流体の抵抗になり、汚水や雑排水の詰まりの原因になります。

注意しよう
  • 水圧のかかる部分には内部がテーパー状のTS継手を使う
  • 汚水配管のVU継手に肉厚のVP管を使うと段差ができてつまりの原因になる
  • DV継手にVU管を接続しても段差を生じる

排水管の接続

授業での排水管設置のようす

道具

施工に必要な道具を紹介します。

主な道具類
  • シャーパー(エンビ管専用のノコギリ)
  • 接着剤(VP用かHI用)
  • ウエス
  • スケール
  • 油性ペン
  • 水準器等
  • レベルバンド

シャーパーが無くても通常の木材用ノコギリの横引きで簡単に切れます。また、VP管で使ったラチェット式の塩ビカッターは太くて使えませんでしたが大口径用の塩ビカッターは色々市販されてるようです。

接着剤は透明なものと見やすく色の付いたものがあります。VU管にはVP(硬質ポリ塩化ビニル管)用とHI(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)用が使えます。HI用はVU、VP、HIで使えるのでコスパがいいと思います。

エンビ管用の接着剤にはBと表記された太い管用の粘度が高く乾きにくいものもありますが、住宅の排水管で使われる呼び径100程度の管ではA表記の低粘度速乾性が適しています。

TS継手の時のように面取り器は使いません。切断した管に付着した切りくずをウエス等でふき取って接着剤を塗布します。

排水管は勾配が重要なので水準器が必ず必要になります。底面にV字のくぼみのある水準器だと両手が使えて便利。マグネット付きだと単管パイプなどにも使えてさらに便利です。

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配管

授業での配管の例

配管の方法は給水で出てきた先分岐工法と同じです。

新たに配管する場合や複雑な配管は図面を作成し、それを元に墨を打ちます。基礎や土台部分に直接引かずに養生テープなどを貼ってその上に墨打ちするのが良いと思います。管の一部分だけを交換する場合やシンプルな配管では必要ないと思います。

汚水の流れとは逆に下流側から考えます。もっとも遠い上流側まで太い主管を通し各設備から出る排水を枝管として伸ばし図面上は最短距離で主管に接続します。実際には設備の真下まで伸ばした枝管をエルボ等で垂直に立ち上げてつなぎます。

これら主管、枝管ともに2%の勾配を確保しなければならないのが給水との大きな違いです。正確に言うと雑排水に関しては勾配が2%よりも大きく(急勾配)になっても問題ないとのこと。汚水(トイレ)は急勾配にすると水だけ先に流れてしまい汚物をうまく流せなくなるので2%厳守だそうです。

下流側を高くしてしまうと床下内で勾配が取れなくなる可能性があるので図面上でしっかり解決しておきましょう。

立体交差する場合は給水管の下になるようにするのが基本だそうですが、模擬家屋ではその限りではありませんでした。

授業では主管と汚水配管(トイレ)は呼び径100、洗面台やキッチンなどの雑排水は呼び径50を使いました。一般的だと思います。

床下が土間コン+板張りになっているのでレベルバンドという高さを調整できるサドルをビスで固定できましたが布基礎の場合下は土なのでどのように固定するのか分かりません。講師の方に聞いておけばよかったと今さら思っています。

おそらく勾配を取った主管を土の上に直に置いて枝管など固定の必要な場合は土台や基礎にサドルを取り付けて固定するのでしょう。スロライ工房の床下を早く覗いてみたいです。

接続

配管設計でしっかり勾配が取れていれば接続はシンプルです。墨に合わせてサドルを数か所固定し、その上に下流側から組み立ていきます。LTを例にします。

①分岐点に継手の中心がくるように下流側の管を接着します。継手の中心は物理的な中心ではなく接続される管の延長線上にある点です。下図参照

大曲がりY(LT)の中心

②この継手の上流側は次にくる継手の中心点(分岐点)までの距離からそれぞれのZ寸法を引いた長さの管になります。もしくは二つの継手の飲み込み口の間の距離を測って飲み込み寸法を足してもよいと思います。飲み込み寸法はメジャーを入れれば簡単に測れます。

またはこの継手の上流側に少し長めの管を接着してしまい、その管に次の継手の中心点を印しさらに飲み込み寸法分を考慮して切り落とす”現物合わせ”もできます。

③枝管側に管を仮り差し込みして主管に対する勾配を決めてサドルで仮止めします。

④継手の内側と差し込む管の順に接着剤を塗って止まるまで差し込み10秒ほど固定します。TS継手のように力も要らず戻ってくることもないので楽に進められます。

⑤以降その繰り返しになります。主管の勾配を決めてから枝管の勾配を決めないと後で直すことになります。

⑥設備を設置するまでの間、養生テープなどで管をふさぐのを忘れないようにして下さい。口径が大きいので色々なものが落ちます。工具とか携帯とか。

まとめ

VUを使った配管は2%の勾配がカギです。事前の設計をしっかり行えば接続作業自体はVP管より楽です。極端な話、継手に管を全て差し込んで仮組みして合わせてみることもできます。

配管全体の高低差がどのくらいありそれを床下空間のどの高さに納めるのか事前に図面上でしっかり決めてあればスムーズに作業が進むと思います。

今回紹介したような排水管のDIYは集合住宅や賃貸で行えるものではありません。汚水が漏水したら大変ですから。中古住宅それも古屋といわれるようなボロ戸建てを買ってコツコツとリフォームを楽しむのが大人のたしなみです。

ぜひ時間と勇気のある方は自己責任のもとやってみてください。

ではまた。

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