【必読】DIYの為の水道工事の基礎知識(VP編)

僕が職業訓練校に入って一番学びたかったのは給排水管の接続や取り回しです。

上水道や給湯、排水管などは壁や床下に納まっていて通常見えません。どのように考えて配管し、どんな接続をするのか知りたかったのです。

基本的な知識と模擬家屋での配管設計、接続を学んだのでとても勉強になりました。

今回は給水のVP管に限ってのお話になります。架橋ポリエチレン管や排水管の話は別記事にしたいと思います。

この記事を読めば適切な部材の選定、接続の仕方、気をつけるべきポイントなどが分かります。

ヒデ

長年の謎が解けたぞ

目次

水道法による規定

上水道のDIYには水道法が関係してきます。全てを好きなようにいじれる訳ではありません。少し勉強してみます。

指定給水装置工事事業者

上水道の場合、公共の配水管から蛇口までの設備を「給水装置」といいます。

水道法にはこの「給水装置」が指定給水装置工事事業者以外の施工による場合は、給水契約の申込みを拒み、又は給水を停止することができるという規定があります。

下の図のように道路などに埋設されている本管または配水管から分岐して、水道メーター(量水器)までが給水管引き込み工事。水道メーター(量水器)から住宅内の蛇口や水回り設備までの工事は屋内配管工事といいます

いずれの場合も指定給水装置工事事業者のみが行える水道工事であり、非指定業者が工事すると違法行為となって過料が科されたり給水が止められたりする可能性があります。

例え自宅の敷地であっても配管工事などは水道法の規定により個人ではできません。

以前の記事「【中古住宅のDIYリフォーム】について考えてみる」でも説明していますが、例外として軽微な変更は認められています。軽微の度合いは多少あいまいですが、おおむね配管を伴わないものに限るようです。

給水装置とクロスコネクションの図
参照|東海村HP

DIYでできるのは

つまり上水道の場合、DIYでできるのは水栓(蛇口)の交換やパッキン等の給水用具の部品交換に限られるということになります。

井戸水をポンプでくみ上げて宅内に給水している場合や、沢の水などを使っている場合は水道法の適用外な為、自由にいじれます。

例えば上水道と井戸が両方ある場合でも「クロスコネクションの禁止」の規定に基づいて別系統の配管になっています。上水道はそれ以外の配管と接続してはならない決まりになっているのです。井戸水の方だけDIYする分には法に触れません。

硬質ポリ塩化ビニル管の種類

HIVPの継手
VP管

給水に使用される管はたくさんの種類があります。新旧含めると以下のような感じです。

管種特徴用途価格
鉄管丈夫だが錆びるので新たに施工されることはない//
銅管以前はよく給湯用に使われた//
VP安価で加工がしやすく広く普及しているリフォーム
HIVPVPより高価だが埋設管として優秀リフォーム
HTVP給湯に使えるVP管リフォーム
架橋ポリエチレン管給湯にも使えて施工が楽な現在の主流新築・リフォーム
ポリブデン管架橋ポリエチレン管とほぼ同じ新築・リフォーム
エルメックス管二層の架橋ポリエチレン管E種大手マンション工事など超高
給水管の新旧一覧・ヒデ調べ

スロライ工房の屋内配管は全て鉄管です。自分で配管し直したいと思ったのがきっかけで色々調べ始めました。現在、鉄管の需要はほぼ無いと思われます。鉄管の以前は鉛管が使わていたんだとか⁉体に悪そうです。

銅管も新たに施工されることは少ないと思います。リフォーム科では銅管のロウ付けを教わりました。古い住宅のリフォームに使うそうです。HTVPとか架橋ポリエチレン管に変換できそうな気もしますが。

架橋ポリエチレン管とポリブデン管はほぼ同じですが、少しだけポリブデン管の性能が低いので価格も低いです。ポリブデン管の方が柔らかく施工しやすいのでリフォームで使いやすいと思います。(厳寒地は注意)

エルメックス管は一般住宅で使われているかは不明。プレハブ工法という継手と融着された状態で現場に持ち込まれ施工される。漏水の危険性を極限まで抑えている工法。

VP管の特徴

今回のテーマである硬質ポリ塩化ビニル管(VP)にもいくつか種類があります。

名称硬質ポリ塩化
ビニル管
(VP)
耐衝撃性硬質ポリ塩化
ビニル管
(HIVP)
耐熱性硬質ポリ塩化
ビニル管
(HTVP)
接合方法接着接着接着
コスト
特徴加工がしやすい
灰色
加工がしやすい
VPより丈夫
濃い青
加工がしやすい
VPより熱に強い
赤茶色
給水に使われるVP管・ヒデ調べ

外観は排水で使われることの多いVU管に似ていますが給水の圧力に耐えるように肉厚にできています。

上水道の水圧は通常0.3Mpa(メガパスカル)前後ですが、法的には水圧の範囲を0.15Mpa(メガパスカル)以上~0.74Mpa(メガパスカル)以内としています。リフォーム科では給水管施工後の水圧テストで1.75Mpa(メガパスカル)まで圧をかけていました。

VP管の肉厚はVU管のおよそ倍前後あります。そのため長さと太さが同じであれば重さも倍前後となります。ちなみにVPはVinylPipe(ビニルパイプ)、VUはVinylUsuniku(ビニル薄肉)からきています。

HIVPやHTVPはVP管にそれぞれ耐衝撃性や耐熱性を持たせたものです。

いずれの管も内面が非常に滑らかで摩擦抵抗が小さく長年にわたり効率よく通水できます。また、加工が楽で工事費用も安く抑えられます。

硬質ポリ塩化ビニル管の特性として温度変化に弱い性質があります。直射日光により反り(曲がり)が発生したり、寒い日の急激な温度変化によって破損や凍結の恐れがあります。

使い方

先分岐工法の例
参照|三菱ケミカル

主にチーズやエルボなどの継手を用いて施工する先分岐工法に使われます。住宅の床下に配管した主管からキッチン、洗面、お風呂、トイレ、など各水栓に順次分岐しながら配管する方法で、従来からよく使用されてきた工法です。

管と継手の接続には専用の接着剤を塗布して強く差し込みます。

呼び径について

VP管などの給水管について考える時に「呼び径」について理解しなければなりません。

管類の場合、呼び径とは内径の近似値に対する名称だと考えます。JIS規格ではミリ表記のA呼称とインチ表記のB呼称の二つが定義されています。

給水管を考える場合多くのプロや、現場で働く方がそうであるようにミリ表記のA呼称を使うのが通常です。

VP管などの規格一覧を見てみると呼び径13、16,20、それぞれの内径は13,16,20、と同じです。しかし管が太くなるにつれ内径との差は大きくなります。呼び径と内径が同じなのはたまたまだと考え、呼び径はあくまで呼び径であり外径とも内径とも違うと考えると分かりやすと思います。

外径60ミリのVP管と、同じく外径60ミリのVU管があるとします。これらの管の呼び径は同じです(VP、VUは呼び径が同じであれば外径も同じ)。呼び径は何ミリだと思いますか?

正解は呼び径50ミリです。VP管の内径が51ミリ、VU管の内径は56ミリです。同じ呼び径でも内径は違います

管類の呼び径が外径ではなく内径の近似値であるのは物体の通過する空間が重要であるためだと考えられます。また、VP管とVU管で外径を揃えているのは同じ継手を使えるようにしているのだと思います。とはいえ、液体を流す場合は外径が同じだからと何でも使えるわけではありません。

注意しよう
  • 水圧のかかる部分には内部がテーパー状のTS継手を使う
  • 汚水配管のVU継手に肉厚のVP管を使うと段差ができてつまりの原因になる
  • 肉厚のDV継手にVU管を接続しても段差を生じる

VP管を使った配管と接続の基本

配管

給排水管混合設置授業の様子

VPを使った配管の場合は先分岐工法になります。管路に沿って近い所から順に分岐させます。20Aで来ている場合は分岐で13Aに変換しましょう。異形継手のチーズやエルボを使います。

新たに配管する場合や複雑な配管は図面を作成し、それを元に墨を打ちます。基礎や土台部分に直接引かずに養生テープなどを貼ってその上に墨打ちするのが良いと思います。屋外の場合は段ボール等を使って一時的に接合箇所が分かるようにしておくと良いと思います。管の一部分だけを交換する場合やシンプルな配管では必要ないでしょう。

立体交差する場合は排水管の上に交差し、袋小路のような水が停滞する配管はしないようにします。

ベタ基礎の場合土間コンに転がしてサドル等で固定します。布基礎であれば下は土なので構造材に固定しましょう。急激な水圧の変化で水道管は結構動くので1m間隔を目安に固定して下さい。

床下から立ち上げる場合はフロアーの上何センチまで必要なのかを確認し垂直に配管します。必ずフローリングの下にある根太に固定するようにし、施工後すぐに水栓を付けない場合はゴミが入らないように養生テープを巻くなどして下さい。

壁から給水する場合は基礎沿いに立ち上げて床下で壁に入ります。壁の中から必要な高さでエルボを使って取り出します。給水栓ソケットを使う場合は壁面と面一にします。給水栓ソケットの近くを含む2~3ヶ所壁内で固定しましょう。給水栓にシールテープを巻いてねじ込むとかなりの力がかかるので固定する柱が無い場合でも木材で盛って固定して下さい。

強引に木片で固定の例
壁内に納めるつもりの給水と給湯の管

道具類

施工に必要な主な道具を紹介します。

主な道具類
  • シャーパー(VP管専用のノコギリ)
  • 接着剤(VP管用)
  • ウエス
  • 面取り器(リーマー塩ビ管用)
  • スケール
  • ペン
  • 水準器等

シャーパーが無くても通常の木材用ノコギリの横引きで簡単に切れます。また、VP管の細いものは塩ビカッターと呼ばれる握って使えるラチェット式の工具で切ることもできます。ただし塩ビカッターは冬場の寒いとき管が硬く割れやすいので注意が必要です。(ヒデの感想としては塩ビカッターは意外に斜めになりやすいし手が疲れるし値段が高いのでノコギリで十分だと思いました。)

接着剤は透明なものと見やすく色の付いたものがあります。硬質塩化ビニル管(VP)用とHI管用、 HT管用などがあり、VP管は硬質塩化ビニル管用とHI管用で接着できますがHI管にはHI管用しか使えません。

HI用はVPにも使えるのでコスパがいい

また給水に使われる細い管に最適なものは低粘度速乾性やAと表記されています。Bと書かれたものは粘度が高く乾きにくいため太い管に使われます。

名称
硬質ポリ塩化
ビニル管
(VP)
耐衝撃性硬質ポリ
塩化ビニル管
(HIVP)
耐熱性硬質ポリ
塩化ビニル管
(HTVP)
VP管用
HI管用
HT管用
VP管の接着剤選定・ヒデ調べ

面取り器は必ず使います。切断した管の外側は必ず面取りしてから継手等に差し込みます。これは水圧のかかる給水管に使われるTS工法と呼ばれるもので、継手の内部が次第に細くなる(テーパー状)構造で、面取りせずに差し込んだり、バリのある状態の管を使うと接着不良が起きて漏水の原因になります。

接続

VP管と継手の接続断面図

VP管は継手の中心まで届くわけではないので墨出し(配管設計)より少し短く切る必要があります。どのくらい切るかというのが図のZ寸法です(Z寸法という呼称は一般的ではないと思われます)。各継手の内部はテーパー状になっているので差し込む力によって(人によって)差し込み量に差がでます。

上図のように受け口長さ分VP管を差し込めるとは限りません(図のテーパーは少し大げさに書いてあります)。例えばVP13Aのエルボだとすると中心から継手の端まで37ミリ、受け口長さが26ミリあります(メーカーによって差があります)。差し込んでみて24ミリしか入らなければ飲み込み寸法が24ミリ、Z寸法が13ミリということになります。

墨より13ミリ短くした管をつなぐことによって墨どおりに施工できます。管の呼び径(13Aとか20Aとか)によっても変わりますし、継手によっても多少違います。同じ継手でも面取りの具合とボンドの塗り量によって思いのほか変わります。

あまり神経質になる必要はありません。数ミリ違っても全く問題ないので、あくまで考え方のお話です。

よって初めて施工する場合はチーズを使って接続練習してみるのがいいと思います。チーズは中心から入口までのサイズがエルボと同じです。1つで3ヶ所練習できます。ボンドを塗らずに差し込むとあまり入らないわりに抜くのが大変になります。

その他の端末に使う継手はそれぞれサイズが異なりますが、先に管とつないでしまってエルボやチーズでサイズ調整するとうまくできると思います。

加工のコツ

管は可能な限り垂直に切ります。ノコギリなどで切った場合は管内に切りくずが残らないように切り口を下にします。内側は軽く、外側はそれなりに面取りします。

継手、管ともに切りくずや油分を拭き取ってから接着剤を塗布します。継手から先に塗るのがおすすめです。授業の参考資料には継手内側はやや薄く、管にはやや厚く塗布すると書いてありました(あまり気にしてなかったですが)。

いっきに差し込んで止まったところ(もしくは狙ったところ)でしばらく固定しましょう。力を抜くと管が戻ってくるので15秒くらいはそのまま頑張ります。何本も加工してるとなかなか疲れるし、夏場床下で施工したりすると尋常じゃない量の汗をかきます。はみ出た接着剤はウエスで拭きとってください。

管を垂直に立てる必要がある時は一度軽く差し込んで曲尺などで位置決めしてから管と継手にマジックで印をつけます。ボンドを塗って差し込んだあと10秒くらいして管の戻りがないことを確認してから微調整してました。あまり早く手を離すと「にゅ~」っと管が出てくるので焦ります。

接続後15分はムリな力をかけない、通水は2時間以上たってからとのこと。

給水栓ソケット

左インサートあり 右インサートなし

給水栓ソケット(給水栓継手)は交換のために取り外す事が考えられるので金属のインサートが入ったタイプをおすすめします。樹脂のネジ山は壊れやすくリフォーム科の実習でもいくつか壊れて水漏れしてました。一度壊れると漏水しないように接続するのはかなり難しいので真っ直ぐゆっくりねじ込んでください。

もしもインサート無しの給水栓ソケットのネジ山を壊してしまって接続し直しが難しい場合は一度シールテープの無い状態の水栓を正しくねじ込んで矯正してみましょう。その後漏水状態を見ながらシールテープの巻き数を少しづつ増やしてみます。

うまくいけば使えるかもしれません。

まとめ

新築やリフォームの現場でVP管の使用頻度が減ったといわれますが中古住宅ではまだまだVP施工が多いと思いますし、埋設管はVPです。硬質ポリ塩化ビニル管を知ることで給水管の施工にも自信がつきます。。価格も安く加工も楽なのでどんどんDIYしてみましょう。

キッチンやお風呂など水圧低下して欲しくない場所にポリ管のヘッダー工法を使い、その他の場所はVP管で先分岐するハイブリッド配管なんかもいいなぁと最近考えています。

ではまた。

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